私は客間に通され、娘さんと母堂と二人を前にして、悉皆の事情を告白した。(中略)「結構でございます。」母堂は…

私は客間に通され、娘さんと母堂と二人を前にして、悉皆の事情を告白した。(中略)「結構でございます。」母堂は、品よく笑いながら、「私たちも、ごらんのとほりお金持ではございませぬし、ことごとしい式などは、かへつて当惑するやうなもので、ただ、あなたおひとり、愛情と、職業に対する熱意さへ、お持ちならば、それで私たち、結構でございます。」私は、お辞儀するのも忘れて、しばらく呆然と庭を眺めてゐた。眼の熱いのを意識した。この母に、孝行しようと思つた。(富嶽百景)
太宰 治

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